病気や障がいについて伝えられる環境・伝えられない環境
職場でどう伝えたのか
通院し始めて、最初は大丈夫かな?と思っていたのですが、ある程度CD4が下がってから服薬を始めていたので、CD4が200代前半とかになっていて、ちょっと体調的にもなんかすぐれないなと。はっきりどこがどうというわけではないんですが、良くないなっていう時に、自分の直の上司はある程度話が分かる人かなあと自分も思ったので、実はこういう状況なんですっていうことを説明しました。その時はそれで良かったんですけど。その後別の病気で急に即入院みたいになってしまった時があって、そのタイミングで社長がうちの職場に来てた時だったんで、その時にうちの上司と社長の間で話し合いがもたれて、実は自分がこういう状況なんだっていうことが知るところとなりました。(男性・30歳代)
上司にどう伝えたか
うまく言えなかったんで、病院でいただいた紙をそのまま渡しながら自分は説明しました。自分もいきなり「自分HIVです」と言うのも説明も本当に難しかったんで、「実はこういう病気なんです、感染したらこうなります」と「感染して注意すること」みたいなことが書いてあるようなA4版ぐらいの一枚の紙があったので、それを見せながら、「今実はこういう状況なんです」と言って。あとは言われたことに一つ一つ、ポツリポツリと答えていくような感じで言ったと思います。だから、確かに会社の人に説明するときにこういうふうに説明したらいいですよ、とか、場合によっては家族に説明するときにこう説明したらいいですよっていう言い方とかを教えてくれるような用紙のようなものが医療側にあったら便利だと思います。別にこの病気に限らず、病気のことって説明が難しいし、詳しく話そうとすると、すごく医療的な用語とかも入ってきますから。わからないですから。そういうのを説明しやすいような方法を書いたものがあればいいな、とは思うんです。(男性・30歳代)
一般就労で上司や同僚に病気の話をして理解を得た
アルバイト、フリーランス時代を3年半ほど続けていた中で、学生時代の同級生(今の職場の代表)から仕事の話を持ち掛けられました。もし良かったら新しく立ち上げる会社で一緒に働いてくれないか?と。迷いに迷いました。アルバイト・フリーランスの仕事では収入のばらつきがあったこともあり、安定した収入を求めたほうがいいのか。しかし、この時点でその仕事が成功するものかもわからないし身を投じていいものか。
その仕事(今の職場)には興味もありました。でも、フリーランス時代のお客様も抱えています。ここでこちらから打診したのが、フリーの仕事を継続しながらでもいいのなら一緒にやりたい、ようは掛け持ちしても良いかの提案でした。
ただ、ここであの大きな壁がありました。「HIVであることを悟られないか」問題。
ストレスフリーな状態で仕事も続けてきましたたが、勤めるということになればもちろん覚えることも多く、制約も生まれてきます。アルバイトとは違い、社員登用としての話だったからなおさらです。また、このときは30代半ばということもあり、当時付き合いのあった知人からは「結婚は?」とか「付き合ってる人はいないの?」なんて話題が多く、同性愛者として面倒なやり取りオンパレードな時期でした(笑)。
まして今度は表舞台に出て仕事ということでもありましたから、人との接点も増えることは間違いなく、そんな話題も永遠に続くことが容易に考えられる状況でもありましたから、(今の職場の)代表には、万が一何かあったりしては迷惑かけると思い、わかっておいてもらいたいという一心で、病気のこと、同性愛者であることも打ち明けました。
カミングアウトする前のあの沈黙、妙な間、心臓の中をくすぐられていながらドキドキしているような感覚。今でも忘れません。だけど、その仕事で頑張っていこうという決意表明の一つでもあったのかもしれません。
まあ、結果、ふたを開けてみれば、それまでの恋愛話の質問に対する受け答えを見ていて、「もしかしてゲイ?」と代表は思っていたようで、普通に受け入れてもらえた形。まさに拍子抜け。
自分にとっては理解者がいる中で新しい仕事を進めることができるということになり、代表も理解を示してくれる器があったから良かったのかもしれません。今では2人で仕事の話をした流れで、ゲイの話題で話をすることもあるくらいです。(男性・30歳代)
どこまで職場内で病気や障がいについて知らせるのか
(就活面接のときに)それはお互いに、意識のすり合わせです。それが(私の場合には)うまくいったんでしょうね、きっと。とても気持ち良かった覚えがあります、面接は。で、確かその面接の最後で「どの辺まで開示しましょうか、伝えましょうか」ということも話題になって、私は「とりあえず、人事部担当者と上司あたりで」ということで伝えたんですけど。中途で入る人間というのは、ほぼほぼ障害者っていうのがうちの会社なんです。なので、何らかの障害をもってこの人は入ってきているというのを、他の社員の人はわかるわけです。「その時どうしましょうか」という話になって、「それでは、内臓疾患がありますみたいな感じで言いましょうかね」みたいな感じでと、確か話はしました。(男性・50歳代)
病気についての職場での申告
例えば仕事の中で結構どうかなって思ったのは、工事案件に立ち合いで入るときに、名簿に「もし今あなたがかかっている病気があったら書いてください」という欄があるんです。そこに書けるような病気って、せいぜい高血圧とか糖尿病とか、そういうありがちな病気しか書けないわけです。もしなんか事故が起きたりした場合に、これは自分だけじゃなくて、自分を雇っている会社全体の責任にはなってしまう話だと思うのでそういうのってやはりちゃんと書くべきなのかなあ、でも書いたりしたら相当な人に見られるわけだから書けないよな、と思います。糖尿病だったら絶対書くと思うんですけど、みんな。(男性・30歳代)
職場で病気や障がいについて伝えて働きたい
会社には伝えてないです、病気に関しては。それを伝えて、全員にというわけではないですけど、しかるべき人には自分の病状をわかってもらった上で働きたいという考えがなんとなくあったんです。なので、今の職場は、障害者雇用で就職しました。なので、人事部の担当者と直属の上司はわかっています。(男性・50歳代)
特に伝えなくてもいいのではないか
今になったら、なんでそんなに意識して(HIV陽性であることを)伝えなきゃいけなかったのかな、って思っています。意識し伝えたところで、別に他の人も私も得もしないし、と思って。今では面倒なので、みなさんに伝えるとか、そういうのは気にしなくていいです、って上司に言っています。(女性)
無理解な上司に代わるとやめざるを得ない状況に追い込まれる
理解のある上司がいる時は働きやすかったんですけど、結局いなくなり新しい上司になってしまったら居心地が悪くなって。(私のことを)考えてくれる人がいない。その時に、服薬を始めなきゃいけなくなってしまった。妊娠して出産して、服薬を中断したのと、他の病気の手術が入ってしまったので服薬が遅くなってしまったのですが、そういう状況だったのが伝わらない。体調が確かにちょっと悪くなったのですが「もう無理だよ」と言われちゃって。それで、私の主治医が産業医の先生と話し合ってくれて、絶対良くなるからというふうに話してくれたんです。産業医の先生は、体のことを考えた方がいいから、辞めた方がいいよ、って言っていて。それはいい意味なのか、会社としての都合なのかはっきりしないんですが、それで辞めました。(女性)
上司がどういう考えを持っているのかによって左右される
直属の上司というのは調整する立場にあるので、すごく大事だなと思います。今の職場の上司は優しいから、今すごく居心地が良いんです。病気のことも安心して話せています。私、がんなど他の病気で手術を受けたことがあるんですが、その時の上司は、あまりそのあたりについて優しくはなかったんです。だから異動の時には人事の方が、他の病気のことも含めて「新しい部署の方が働きやすいよ」って言ってくれたのが印象的でした。「強制じゃないけど、どうかな?」みたいな感じで居心地の良い部署に異動することができました。
実はこの間、怪我をしてしまったのですが、重ねて体の具合が悪くなった時の回復の遅さというのを上司は分かっているから「在宅勤務でいいよ」って言ってくれて。同じ部署で働いている方も、そういうことを繰り返してるうちに、何の病気かは伝えていなくても、「あ、体弱いんだ」というのは分かってくれたようので「無理して来ないで在宅勤務にした方がいいよ」と言ってくれたりしています。(女性)
会社側が職場のメンバーに知らせたい場合も
入社時は課長クラスの人までにする(=HIV陽性であることを知らせる)という感じで伝えられていました。ただ、その後上司から「職場の同じグループの人にも伝えたい」というリクエストがあって。私はその時は、その就労の場をすごく大事にしたかったので「いいですよ」と答えたんですけど、その後そこでうまくいかない部分もあったりして。分かってくれる人もいれば、ちょっと噂をしてしまう人もいたりしました。(女性)